はじめに ー 情報更新の大切さ
歴史は,新資料発見などにより常にアップデートされていきます.空襲の実態についても同様,新しい資料の発見やその解釈などにより,随時更新されていくべきものです.
これまで出版されてきた書籍の中には仙台空襲の投下弾の種類などが実際と異なって書かれていることがよくあります.例えば,投下弾の種類は焼夷弾911.3トンと高性能爆弾8個と記載されていますが,正しくは,焼夷弾911.3トンと照明弾です.これは初期の書籍が米軍資料の解読を誤り,それが80年を経て現在まで踏襲されている一例です.
これらの誤りをどの資料によってどうアップデートするか,具体例を示してみました.
米軍は目標を攻撃した後,次の攻撃の資料とするため,攻撃の仕方・結果・その評価などの詳細を記した作戦任務報告書等を作成しています.これらはアメリカ国立公文書館に保存・公開されており,私たちはこれら資料を収集している日本の国会図書館からも簡単にアクセスすることができます.
空襲の基本的な資料である「作戦任務報告書」の集約統計表から,B-29による空襲の目標・機数・攻撃時間・投下爆弾の種類を見てみましょう.
目標・機数・攻撃時間について
下記表-1の左端の項目は攻撃した航空団名,左から2番目の項目は目標都市,3番目は目標の種類,4番目がB-29爆撃機の機数を示しています.

解説
第58航空団の第1目標(P: Primary target の意)は仙台市街地で,113機が0時11分から2時5分※まで仙台を攻撃,10機の先導機(a: pathfinder)は0時3分から0時45分まで市街地を攻撃.1機が臨機目標(Target of opportunity)として23時19分に勝浦を攻撃した,と読み取ることができます.
※時刻はグリニッジ標準時で記されているので,日本時間にするには9をプラスする.
投下爆弾の種類と数量について
下記表-2には,搭載した焼夷弾と投下された焼夷弾の種類と数量等が記されています.左から2番目の項目には爆弾の種類と重量,3番目は信管の設定,4番目は搭載爆弾の数と重量,5番目は実際に投下した数と重量が記されています.

解説
仙台を空襲した第58航空団が搭載したのは,500ポンドのAN-M17A1集束焼夷弾1,100ポンドのAN-M47A2焼夷弾2,M-46写真用照明弾3です.
注1)内部にM50マグネシウム・テルミット焼夷弾を110本束ねたもの.後攻部隊が投下.
注2)大型の油脂焼夷弾.先攻部隊が投下し,近代的な消防車でも消せない大火を起こす.
注3)夜間なので写真撮影のために照明弾が必要だった.
AN-M17A1集束焼夷弾は2257個,564.3トンを搭載し,その内2155個,538.7トンを仙台市街地に投下.M47A2焼夷弾は11896個,410.2トンを搭載し,その内10806個,372.6トンを目標に投下.M-46写真用照明弾8個は,爆撃中の写真撮影のため随時使用されました.(照明弾は爆弾ではないので重量には加えない)
集束焼夷弾の種類について
集束焼夷弾にはM50マグネシウム・テルミット焼夷弾を束ねたM17集束焼夷弾の他,ゲル状の油脂から成るM69焼夷弾が38本束ねられたE46集束焼夷弾があります.
後者は木造の日本家屋が密集している都市に(東京や静岡,福岡など多くの都市はこのタイプ),前者はコンクリートや鉄骨の屋根を貫くことができ,これらの建物が多い都市に(仙台,佐世保,平塚など.ヨーロッパの都市に多用された)投下されています.

